実験で明らかになった効果的な頭の使い方②
どんなペースで練習すればいいの?
今回は前回、紹介した想起学習にまつわる各練習の実験をご紹介します。
前回記事はこちら↓
集中練習の落とし穴
何かを学ぶときに集中さえすれば、上達すると思っていませんか?または、1つのことを完璧にやりきるまで何度も続けていませんか?
学校や職場でも、「集中すればできる!」考え方は広く受け入れられています。
1つの物事に集中する練習は、覚えた実感があるし、やりきった満足感を得られるでしょう。しかし、忘れるのが早すぎて、長期的な記憶に結びつかないのが現実のようです。
間隔練習(38人の外科研修医の実験より)
研修医たちに手術に関する研修を受けてもらい、1か月後にテストが実施されました。その際に、研修内容を1日で学んだグループと1週間に一度のペースに分けて研修を学んだグループを用意しました。(テスト内容はラットの毛細血管をうまく繋げるかどうかです‥)
結果は、1週間に1度のペースで学んだグループが1日で学んだグループより良い結果を残しました。それどころか、1日で学んだグループの3名は手術を完了することができませんでした。
なぜ間隔をあけると成績が向上したの?
両グループの違いは期間です。期間を開けることで成績に違いが出たのはなぜでしょうか?
答えは記憶の統合が行われたためと考えられています。統合は睡眠により生じ、新しく学んだ知識と既に習得した知識を整理し、結びつけるプロセスです。そのため、睡眠は学習において超重要だと言われています。
交互練習(交互に練習すると効果が上がる?)
二つ以上の科目や技術を交互に学ぶ練習法です。4つの種類の図形問題を交互に解いたグループと集中して解いたグループを用意し、一週間後に問題を解いてもらったところ、交互練習を行ったグループのほうが得点が高かった結果がでています。集中グループの正答率が20%、交互グループの正答率が63%でした。
ちなみに、短期的には集中練習のほうが点数は高かったです。学習してすぐのテストでは、集中グループの正答率が87%、交互グループの正答率が60%でした。
多様練習(玉入れがうまく言った理由は?)
全く練習せずに、子供が90センチの距離から玉入れを成功させました。なぜでしょう?答えは、120センチ、60センチの距離から玉入れの練習をしていたからです。ある状況で学んだことを別の状況に適用できる練習を多様練習と言います。
私たちの脳は種類の異なる練習をすることにより、それまでやっていた運動と異なる箇所が活性化します。多様練習を用いることで、高度な運動技術を習得に関わる部分で統合され、やっていないことでも柔軟に対応できるようになります。
まとめると、記憶の定着に有効なのは間隔、交互、多様練習です。一方で、集中的な練習は短期的に成果が出たように感じますが、忘れる速度が早いため記憶の定着には結びつきません。まるで、大食いしてすぐに吐き出すようなものです。
様々な練習を行うにしても、目先の成果を追い求めるのではなく、習慣を身に付けるほうが後々の成果に繋がる話でした。
参考文献:「使える脳の鍛え方」
38人の外科研修医の実験
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1856544/
数学の勉強を交互に行うことのメリットを示した実験
https://link.springer.com/article/10.1007/s11251-007-9015-8
玉入れの実験